根底にある「農」の記憶
私の原体験は、幼い頃の田植えの手伝いにあります。当時は腰の痛みに耐えながら必死に作業をしていたことを、今でもはっきりと覚えています。実家の畑では両親が自給自足の野菜作りをしており、汲み取り式便所から天然肥料を担いで畑へ運ぶ作業も、私の大切な(そして過酷な)役割でした。
近隣の家庭も同じように畑仕事に精を出していた時代です。やがて化学肥料が普及し、私も成長するにつれ、葉を見れば野菜の種類が分かる程度の知識はありつつも、次第に土いじりからは遠ざかっていきました。
「瓦礫の土地」から始まった再生
家庭菜園に再び向き合うきっかけは、父の他界でした。私たちが家庭菜園として譲り受けた場所は、もともと区画整理で埋め立てられた土地です。表面の10cmこそ綺麗ですが、その下には廃材や石、コンクリート片が入り混じる過酷な地盤でした。
生前、父が毎日少しずつ、黙々とその瓦礫を撤去していた姿を覚えています。当時の私は全く興味がありませんでしたが、父が去った後の畑を守るように、時折草を刈り、2023年から本格的に野菜作りを開始しました。
挫折とYouTubeでの猛勉強
2023年。当初は「種をまけば育つだろう」と、土壌改良もせずにキャベツや夏野菜(ナス、ピーマン、トマトなど)を植えました。しかし、結果は惨敗。芽は出ても大きく育たず、キャベツは結球せず、実がついても収穫前に虫に食べられる始末。収穫はほぼゼロでした。

「これではいけない」と一念発起し、YouTubeの専門チャンネルを巡って土作りの猛勉強を開始しました。
4年間の試行錯誤:土を「育てる」
2024年からは「土壌改良」を最優先にし、以下のような様々な実験的アプローチを試みました。
- 機械の導入: ホンダのミニ耕運機「プチな FG201」と電動刈払機を購入。硬い土地を徹底的に耕しました。
- 菌の力: 酵母菌(土壌深部へ)と納豆菌(表面へ)を培養して散布。
- 有機資材の活用: 牛糞・鶏糞・米ぬかをうっすらと数回に分けて投入し、地力を回復。
- 自然の循環: 畑に穴を掘り、剪定した庭木や朽ち木、枯草を埋めて土に還す作業。
- 垂直堆肥パイプ: PVCパイプに穴をあけ土中に設置。雑草やバナナの皮、刻んだ段ボールを投入して微生物の住処を作る試み。(これは2026年5月に始めた行為です)

結実、そして現在へ
こうした試行錯誤の結果、2025年には劇的な変化が訪れました。
一番安価な苗から始めたきゅうり、ピーマン、ナスが次々と収穫でき、スーパーの種から育てたカボチャも10個近く採れるほどの豊作となったのです。2023年には放置状態で芽が出なかったアスパラガスも、2年間のエネルギー充電を経て力強く育ちました。
現在は、2025年秋に蒔いた大根や人参が、収穫期を逃して美しい花を咲かせてしまうといった失敗(?)を楽しみつつ、風が吹く中で種を地表面に巻いたサラダ菜を毎日収穫して食卓に並べています。
石ころだらけの土地から、少しずつ「生きた土」へ。 父が拾い続けた石の続きを、今は私が耕しながら、自然と向き合う日々を綴っています。
